どこまでも散歩道〜志治美世子ウェブサイト



歌仙「花大根」の巻

[両吟]

廃屋の記憶愛でをり花大根 志治美世子
  雲雀の声に醒める湖 仏渕 健吾
  旅人に白子むすびをふるまひて 美世子
  電波時計が定時知らせる 健吾
  踏み切って飛び越す月の水溜り 美世子
  夜目にもしるき露草の色 健吾
客分の膾の膳の金蒔絵 美世子
  仕込杖抱くひとのしゃっくり 健吾
  急流に葉のひとひらの浮き沈む 美世子
  小学校が消えたふるさと 健吾
  五月富士大好きだよと君の名を 美世子
  扇を持ちて踊る一座に 健吾
  天幕の桟敷は刀自の定席と 美世子
  枯蟷螂の揺れる上弦 健吾
  氷結の鍾乳洞に迷ひ込み 美世子
  紙ひかうきにメモがびっしり 健吾
  伝へたきことあり花の下で待つ 美世子
  歌手にならんと春服を着て 健吾
ナオ 痛くても長閑に見せるぎくり腰 健吾
  嫁とはいへど代はられもせず 美世子
  モンゴルの血を騒がせる草競馬 健吾
  商ひの銭置き忘れれば 美世子
  こはがりに津波の夢が押し寄せる 健吾
  呪文唱へて叩く枕か 美世子
  オシリスとイシスの息が混じり合ひ 健吾
  視線で問へば疑ひの湧く 美世子
  うれしさは隠しおほせぬ夏帽子 健吾
  やれと立ちたる孫の水浴び 美世子
  憲兵に遮られたる名月も 健吾
  薄のかんざし挿して微笑む 美世子
ナウ 誘ふや暗黒舞踏の赤蜻蛉 健吾
  鳥居の影で拾ふ半券 美世子
  ナビ付けてくるりくるりと車椅子 健吾
  餡が自慢の蓬餅屋で 美世子
  この度も花盗人の名は問はず 健吾
  子猫じゃらして過ごす半日 美世子

起首 平成十七年四月二二日
満尾 平成十七年七月二六日

連句界の大大大先輩、仏渕健吾さんに、まるでよちよち歩きの幼児が、一歩一歩手を引いてもらって歩くように巻いた歌仙です。

健悟さんとは、これ以前にも時々デートする間がらでした。

このデートが、すごい!

まず、銀座の健悟さんと私がともに親しいお店「水の」にて、軽〜く半歌仙(発句を含めて18句)を巻く。

連句初心者の私としては、この健悟さんとのサシで巻く半歌仙だけで、くたくたになるのです。ようやく巻き上がるころには、お酒もいい調子で回ってくる。

やれやれ、ようやく巻き上がった!

「新宿あたりで、もう一軒飲もうか」

と誘われれば、ようやく気分も開放された私は、「行こう、行こう!」とはしゃぐ。

「水の」から外に出れば、そこには夜の銀座が煌々と輝いている。

その銀座の夜を指差して、健吾さんが言う。

「さあ、見てごらん美世子ちゃん。芭蕉の時代には、こんなに明るい夜の空はなかったんだよねぇ。芭蕉の時代の夜の暗さを思いながら、新宿までの地下鉄の中で、三句俳句を作ってみよう!」

えっ〜〜〜!!!

うっそでしょう???

私は心の中で半べそをかきながら、脳みその半分くらいをすでにたっぷんたっぷんとアルコール漬しにしながら、地下鉄の中で必死で俳句を作る。

なんとか三句、出来た!

次のお店で、健吾さんが言う。

「さあ、この三句の中の一句を発句にして、表六句を巻こう!」

鬼〜〜〜!!! 俳諧の鬼だぁ!

健悟さんとのデートは、まるで俳諧修行の苦行僧のような、とってもとっても「ナイス」すぎる、素敵な素敵な時間なのでした。


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