どこまでも散歩道〜志治美世子ウェブサイト



歌仙「偸盗」の巻

[両吟]

陽に少し夏溶けてゐて木立かな 志治美世子
  自転車をこぐ風薫る径 尾山 祥子
  窓ガラス指ピストルで撃ち抜いて 美世子
  寝ている犬のむくと起き出す 祥子
  デジタルで画像処理する月の庭 美世子
  零余子(むかご)ご飯を入れる飯櫃 祥子
不知火の海に泪を沈めをり 美世子
  想ひを翳す水晶の珠 祥子
  正装の君を描けば裸婦となる 美世子
  壁の向こうの摺れた物音 祥子
  磔刑の偸盗の笑み倣岸に 美世子
  骨董市に並ぶ古伊万里 祥子
  二つ目の人情噺に聞き惚れる 美世子
  山を背に吐く月の息白 祥子
  凍てついた聖書の祈り唱へつつ 美世子
  旅に行き交う駅のざわめき 祥子
  饒舌な歴史を沈め花吹雪 美世子
  蕾の日記苦きあをぬた 祥子
ナオ ゆらゆらのおたまじゃくしは無表情 祥子
  拭き掃除掃き掃除全部大嫌い 美世子
  夕焼けのおにぎり包む風呂敷に 祥子
  コンチェルトならモーツァルトだね 美世子
  老若の椅子にまどろみ焼き付けて 祥子
  立ったまま死ぬ恋に雪降る 美世子
  張る乳に届いてくれぬこうのとり 祥子
  学費保険は目減りしたまま 美世子
  湯治宿親の敵と風呂に入る 祥子
  仏の慈悲を忘る網棚 美世子
  吊り橋の真ん中で見る望の月 祥子
  長き眠りの古酒目覚めさす 美世子
ナウ たそがれの街に色刷く秋時雨 祥子
  好きなメロディ耳で捉まえ 美世子
  捻子巻きのねじれた捻れ捻りつつ 祥子
  入学式に急ぐ丈詰め 美世子
  篝火のはぜて揺らめく花の陰 祥子
  春の謡のやがて溶暗 美世子

首尾 平成十九年五月二十五日
於 志治宅

タイトルは「ちゅうとう」と読みます。要は「盗賊」の意味ですが、私の大好きな芥川龍之介の作品名からとりました。

平成十九年岐阜県郡上市文芸祭で、「文芸祭賞」をいただいた、祥子ちゃんとの両吟です。

雨の日、電話で「両吟巻こうか!」と突如まとまった話に、傘を差して祥子ちゃんが我が家にやってきました。

巻き上がることにはワインが三本空いていて、祥子ちゃんはそのままお泊り。後日清書しようとしたら、名残りのウラ六句などほとんど判読できず、「これって、文字?」状態でした。

それでも二人で自由に楽しく、そして祥子ちゃんと私の親しさが、この巻をそのような賞に導いてくれたのだと思っています。

読み返すと打越があったり、背筋が「ひやり!」状態の句もちらほら。


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