どこまでも散歩道〜志治美世子ウェブサイト



そばにいて欲しい、あなたへ。

おかしな夢を見た。

死んだのは、私の夫でもあり、父でもあるようだった。

私は一人ぼっちになっていた。

法要の場らしき場所には親戚らしき女たちがいて、しきりに私をその田舎に誘うのだが、そこで提示される私の今後の生活設計は、とても私が受け入れられるようなものではなかった。

どうあっても、一人で生きていかなければならないのだ。

しかし死んだ夫(父)は、鍵や生活に必要なものすべてを、どこかに置き去りにして、そのまま逝ってしまったのだった。

悲しいのは、悲しかった。しかしそれ以上に、私は困窮していた。

「今夜、部屋に入る鍵すらない! いったいこれからどうしたらいいの?」

私は、泣き叫んでいた。

そんな夢を見た朝、私は家族の出かけた家の中で、一人遅い朝食をとっていた。

今朝の夢の断片が、切れ切れに頭の中に浮かんでは消えていく。

親・・・、夫・・・、そういえば娘は夢には出てこなかったな・・・。

そのとき、ふと頭の中である声が私に話しかけるのを聞いた。

「親が憎くてね・・・、もう、どうしようもなかったのよ。できることなら、その背中を踏みつけて、踏みつけて、あんたに私の気持ちが分かるか!分かるはずないだろう!って、罵ってやりたいと思ったの」

懐かしい声だった。

今でも、時には日に何度も、

「どうして今、生きていてくれないの?」

と問いかける声だった。

炎症性乳がんと言う悪性のがんが彼女を私から奪っていったのは、去年の夏のことだった。


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